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産婦人科医・高尾美穂

「女性の性とデリケートゾーンのお悩みに…」産婦人科医・高尾美穂先生のアドバイス

産婦人科に寄せられる相談には、性交痛やセックスレスといった悩みも少なくないそうです。性にまつわる悩みは友人同士でも話題しにくく、ひとりで抱え込んでいる人も多いのではないでしょうか。実際に相談を受けている産婦人科医の高尾美穂先生からアドバイスをいただきました。

久しぶりの性交渉や診察が怖い人、痛い人もいます

___実際に性交痛やセックスレスについての悩み相談を受けることはありますか

高尾美穂先生(以下、高尾先生):イーク表参道では人間ドックを提供していて、そこでの相談は結構あります。ドックを受けている人は、年代的に40歳以降が多いんです。セクシャルアクティブという状態、月に何度か性交渉の経験が続いているという方は、そんなに多くないというのが実際のところですね。
久しぶりの性交渉だと、やっぱり痛いとか心配とか、そういう声はとても多いです。婦人科の診察がつらいから性交渉も心配という話もよく出ます。

___診察自体がつらいという方もいるのですね

高尾先生:そうです。診察自体が痛いとか、怖いという声ですね。

性交渉歴については、人生で一度でもあれば“性交渉あり”なんですけども、(問診表に)“性交渉なし”って書く人もいるぐらいなんです。子どもを産んでいる方には「これまでに性交渉ありますよね?」と聞くと、「あ、はい」って答えるんですけど、最近はないという意味合いで、多分“なし”につけるんだと思うんですよ。そういった方がいらっしゃるほど、性交渉から遠ざかっている方は多いと思います。腟に何かを挿入するのは、年に1回の婦人科診察のときのみ、みたいな方もいらっしゃるから、それは確かに大変ですよね。診察が怖いのであれば、内診の前に「小さい器具でお願いします」と伝えるのもありです。

特に、閉経を迎えて、エストロゲンが完全にないという状態であれば、物理的に腟の伸びが悪い状態になるんですよね。だから、挿入自体がつらいという状態は、確かに医学的にも想像もできるし理解もできるんですけど、どちらかというと、心理的に腟のなかに何かものを入れるということ自体に抵抗がある場合も少なくないと思います。(性交渉を)ほとんどしていないから、診察も怖いし、いまさら無理……という流れです。

心理的なケアが大切かもしれません

___そういった相談に対して、どのような治療やお薬がありますか

高尾先生:40代の半ばぐらいで、まだ生理がきていますという方であれば、エストロゲンは維持されています。閉経を迎えてエストロゲンが失われても、いきなり腟が固くなることはありません。時間がたって、そこに心理的な要因が加わるから、「あー、痛い」とか「つらい」とか抵抗感が強くなります。その抵抗感から緊張で骨盤底筋を収縮させることになり、より挿入がつらい……という状況を引き起こしがちです。だから、心理的なケアをしたうえで、診察をして物理的に特段の問題がないということをお伝えします。

男性の性器は自分でみることができるけど、女性の性器(外陰部)は、基本的に鏡を使わないとみられない。だから、「どうなっているのか」「どのように変化していっているのか」は、わからない人がほとんどですよね。そこを専門家がみて、大きな変化はないということを伝えるのは大切かもしれません。

そのうえで、滑りがよくなるようなゼリーを買って使ってもらうということはアドバイスできます。

性交渉はコミュニケーションの延長です

___パートナーと気持ちが合致していないとセックスレスになりやすいのでしょうか

高尾先生:(性交渉は)コミュニケーションの一部です。そのコミュニケーション自体が、おろそかになっているというカップルの方が多いということかな。

男性側の性機能は落ちる場合もありますが、何歳でも維持される可能性も高い。そう考えると、コミュニケーションの延長上に、(性交渉を)求められることはありうるわけです。
女性の場合は、エストロゲンの分泌量と性欲は直結していないので、エストロゲンが分泌されているから、月経(生理)がきている年代だから、性欲があるでしょう、というわけじゃないんですね。

女性側は、この人とコミュニケーションを持ち続けていきたいとか、大事に思う気持ちとか、そういったものの総合的な判断として、性交渉を持つというアクションになるわけです。そこに(男性側と女性側に)違いがあるのではないでしょうか。

日常生活でテンションの上がるインナーで気分を変えてみて

撮影:藤沢大祐

___パートナーとのコミュニケーションを楽しむために、何か日常的にできることはありそうでしょうか

高尾先生:もし、「もう性交渉をしたくない」ということであればパートナーにも気持ちを伝えたり、性交渉以外のコミュニケーションを提案したりするのも、できることのひとつです。

「してもいいけれど怖い」という方も、やっぱり、(性交渉の)間があきすぎてしまう前にコミュニケーションがあることが大事だと思います。そういう意味においては、年齢が高い人向けのセクシーな下着はすごく需要があると思います。

40代以降はインナーに機能性を求める年代で、透けて見えにくいベージュで、ワイヤーなしで、スムースな素材で……という選択をしがちかと思います。それに応じて機能性の高い下着が増えていくのはありがたいんだけども、やっぱり、女心をくすぐるおしゃれさも必要だと思います。レイシーなものとか、セットアップがうまくできるものとか。

それも「初めてのデートで、今日もしかすると」みたいなときに(気負って)選ぶものじゃなくて、日常生活のなかでテンションが上がるものがいいですね。そのなかで「今日の下着はみせてもいい」みたいな気持ちも自然だと思いますから。

日常から自信を維持するという意味では、ある程度(体型が)カバーされるという部分も大きいですよね。たとえば、お尻を下からサポートしてくれるとか、横のお肉をこうグッと寄せたり、太ももの部分を上手に引き締めてくれたりとか。あるいは、尿もれの対策もできるけれど、テンションも同時に上げてくれるようなインナーもよいのではないでしょうか。

「ちょっと久しぶりだけれどもトライできるんじゃないか」という気持ちになるような、具体的なアクションが大事なんじゃないかと思います。下着で気持ちを変えるというのもよいチャレンジだと思います。

(産婦人科医・高尾美穂先生)


  • 撮影/藤沢大祐
  • プロフィール
    高尾美穂先生(産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター)
    /女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。ワコールフェムケアポータルサイトのアドバイザー。近著に「更年期に効く美女ヂカラ」リベラル社刊がある。