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【太りやすい?!更年期のからだは意識してつくって】産婦人科医・高尾美穂先生✕ワコール人間科学研究開発センター

「一生を通じてわたしは、どのように変化していくのか?」女性の体型やホルモンによって起こる変化を追い続けている専門家によるディスカッション。

第2回目のテーマは更年期に太りやすくなってしまう理由、体型を維持している人とそうでない人の違いについてです。

→第一回【女性の一生、これからわたしの体型はどう変わる?】はこちら


  • 撮影/藤沢大祐
  • プロフィール
    高尾美穂先生(産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター)
    /女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。ワコールフェムケアポータルサイトのアドバイザー。近著に「更年期に効く美女ヂカラ」リベラル社刊がある。

  • 撮影/合田慎二
  • 坂本晶子さん(ワコール 人間科学研究開発センター 主席研究員)/ワコール入社以来、人間科学研究開発センターにて、乳幼児~成長期、妊娠期を含む成人女性の人体計測に取り組み、女性美やエイジングなどの研究からの情報発信や、研究成果を活用したブラジャーやガードルなど下着の製品開発を担当。2020年には、微小重力研究から「重力に負けないバストケアBra」を開発。

更年期にはバストとおなかが同じサイズに!?

___更年期、つまり40代後半から50代前半の女性の体型変化について「ワコール人間科学研究開発センター」の研究結果を教えてください

ワコール人間科学研究開発センター坂本さん(以下、ワコール坂本さん): 1950年代生まれの女性の体型の時系列変化を追った研究で、18歳から54歳までの周径変化をみると、ウエストやおなかの部分の変化が大きいことがわかりました。とくに20代後半から50代前半にかけてはウエストが平均で約10センチも太くなり、おなかまわりのサイズも大きくなります。50代前半には、おなかとバストのサイズがほぼ同じになり、体重は20代の頃より平均で5キロ増えるという結果でした。周径変化だけでなく、シルエットでも、正面からみてウエストのくびれがなくなったり、横からみるとおなかがでたり、腰のくびれがなくなったり、バストやヒップが下がったりしています。

高尾美穂先生(以下、高尾先生):年々の変化が積み重なった結果、バストとおなかが一緒になっちゃいます、という結果がくるとは誰も思っていないと思うんですよね。こうしてデータを見せられて初めてビックリするんじゃないでしょうか。

___更年期に女性ホルモンが減少すると太りやすくなるのでしょうか

高尾先生:更年期にさしかかる40代後半からエストロゲンは減少し、やがてエストロゲンの分泌がなくなり閉経します。エストロゲンには脂質代謝を促したり、筋肉量を維持したりする作用もあるので、エストロゲンがなくなると太りやすくなるということはいえると思います。でも、エストロゲンがなくなったすべての女性が太るわけではないとすると、エストロゲンが100%肥満に関わっているとはいえません。結局、他のたくさんの要因も関わって体型をつくっているのだというまとめになりますね。

エストロゲンの減少だけでなく、食事や運動量、重力による影響も体型に影響を及ぼします。歳を重ねると運動量が減少するので筋肉量が減ってくる、すると基礎代謝が落ちて太りやすくなる、ということもあるでしょうね。

ワコール坂本さん:更年期の食事についてどのような点を注意すればよいでしょうか?

高尾先生:食事のバランスは重要ですね。昔からいわれている、栄養バランスよく食事をする、偏らない食事をする、腹八分目にするなど、基本的な食事のルールを守ることが大切というのは納得がいく考えですよね。特定の食品を食べたらよい、という極端な考えよりも、全体のバランスを考えることが重要だと思います。

太るから、といって自己流のダイエットで炭水化物を控えたり、油を控えたりすると、エネルギーが不足してしまいますし、更年期の女性の場合は、骨がもろくなることに直結してしまうんです。

あとは、年齢を重ねると食事の量や種類が固定化してしまうことが多いですね。多分、この世代は、どれぐらい何を食べるかということが確立されていて、一週間単位・一か月単位で、ほぼルーチンになっている。同じようなものを同じように食べ続けていて太る。それは結局、消費量が減少しているからです。お風呂の蛇口と排水溝の関係と同じで、入ってくるエネルギーが消費量を上回ってしまっているわけです。ですから、食事の量や内容だけでなく、運動量も意識することですね。

4人に1人が20代からの体型を維持している

___一方で、20代から50代まで体型を維持している人もいます。そうでない人の違いはあるのでしょうか。

ワコール坂本さん:まず、4人に1人が20代から40代、50代まで体型変化が少ないという結果がでています。

高尾先生: 4人に1人というのは意外と少ないんだなぁというのが正直な感想です。

ワコール坂本さん: 私たちは、体型を維持している人々を「維持群」、平均的な体型変化があった人々を「変化群」として身体特徴と生活意識を調査しました。「維持群」の身体特徴としては、脂肪量が少なく持久力があり、筋力があるという傾向がありました。疲れにくいということがいえるかなと思います。


撮影/石川奈都子

高尾先生: 体型維持に関しては、運動習慣があるかないかということはものすごく大きいでしょうね。筋トレというよりも、脂肪がつきにくくなるといわれている有酸素運動を続けられているかどうかでしょうか。たとえばジョギングやヨガなどを続けている人は、自然と代謝も高く、体脂肪もつきにくいといういい循環が生まれているのではないかなと思います。

ワコール坂本さん: 「維持群」への生活習慣についてのヒアリングからは、しっかりと睡眠をとることができていて、日常生活を楽しみながらストレスをうまく消化できている傾向がわかりました。さらに、生活習慣病の該当者や予備軍がいなかったので、“健康的な状態を保っている”とまとめさせていただいています。

高尾先生: もちろん突発的な病気はありますから生活習慣を整えればイコール健康とはいえないと思いますけども、ガンや認知症などの予防のガイドラインには食習慣や運動習慣、アルコールやタバコなどの生活習慣が入っているわけで、やっぱりベーシックな生活習慣の影響が大きいのは間違いないでしょう。健康でいたいという思いを、心のどこかではみんな持っていて、それが実践できているかどうかなのかなと思います。

20代から50代まで体型を維持するのは、無意識にはなかなか難しいと思います。維持している人は、自分がどのようなライフスタイルを望んでいるかがはっきりしているんじゃないでしょうか。その意識を持ち続けて気づいたら50代になり、健康もしっかりと維持できているということかもしれません。

一方で、何か特別に好きなことがあって、そのために体型を維持し続けている人もいるのかもしれません。たとえば、走るのが好きだとか、トライアスロンが好きとか。それをするためには体型維持もしないと辛いというような。

___高尾先生の場合はいかがでしょうか?


撮影/藤沢大祐

高尾先生: 私自身は高校生の時に買ったジャケットをいまも着られるので「維持群」に該当すると思います。
私の場合、食べ物に関しては特別なこだわりはなく、シンプルな食事が好きです。野菜や豆腐を中心とした食事なので、そのお陰で体重をコントロールしやすいのかもしれません。これ以上太るとヨガのポーズがとりにくくなるな、日常生活でからだが重いと動きにくいな、と感じるので、自然と体型をキープする生活習慣が身についたのだと思います。

体重計はあまり使っていませんが、年に一度の健康診断前に体重を確認して調整します。12年ぐらい体重も変わっていないですね。私の目安とする体重は、158cmで50kg前後です。BMI値は22ぐらいが健康とされているので、BMI値は少し低いのですが、ヨガのポーズをとるにはちょうどいいかなと思っています。

20代からの体型を維持している人がやっていること

ワコール坂本さん: 先生は「維持群」の典型的なタイプだと思います。体型を維持している人は、運動についてはジムに通うまではなくても、日々の生活の中で姿勢や歩き方を意識しているという方が多かったです。また、食事については、過食をせず、規則正しい食事をする、外食した日は1週間の中で調整するといったことを心掛けている傾向がありました。下着に関しても、日々の下着がきつくなったら太ったのかなと感じるなど、自分の変化に敏感です。太らないように日常生活の中で工夫をするといった意見もありました。

高尾先生: 何を維持し続けたいのか、それが明確になっていると、生活スタイルも自然とその方向に向かっていくのかもしれませんね。

ワコール坂本さん: さきほど紹介した体型を維持した人へのインタビューの中でも、自分のからだにフィットした下着を身につける習慣がうかがえました。からだの変化に対する意識からくるものなのかなと考えています。

高尾先生: 変化の自覚がなく生活習慣が固定化していると、何かをきっかけにしない限り変わらないのだけど、そのきっかけがない、ということだと思うんですね。年齢的には、子どもはもう独立しているけど、旦那さんのご飯をずっとつくっているといった状況の人がきっと多いと思うので、そういった方たちがある日急に自分だけ食事を控えるなど、大きな変化をすることは難しそうですよね。何かきっかけがないと。

ワコール坂本さん: 自分のからだの変化に気づくきっかけが必要ということですね。

高尾美穂先生: たとえば恋をしたりすれば変わるのかもしれないですね。何歳でもね。

更年期という言葉がちらほら聞こえ始めていたら、「変化」についてみつめるチャンス。健康診断を予定したり、下着を新調してサイズチェックをしてもらったり、同窓会や“推し活”などの機会を企画したり、定期的に自分をみつめ直すイベントや仕組みをつくっておくと、「きっかけ」が発動しやすいかもしれません。

次回は、「成長期のからだの変化とメンタル」についてです。
取材日:2023年7月25日