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ウェルビーイング

【女性の一生、これからわたしの体型はどう変わる?】産婦人科医・高尾美穂先生✕ワコール人間科学研究開発センター

「一生を通じてわたしは、どのように変化していくのか?」

こんなことは、普段、意識しないかもしれません。しかし、将来の自分の変化を予測できれば、落ち着いて受け入れる準備ができたり、望まない変化を避けたり遅らせたり、という対策ができるのではないでしょうか。

「あの時知っていれば」をなくし、将来もここちよく過ごすために、知識をアップデートしませんか。

「女性の一生を追う」専門家対談

女性の体型は加齢にともなってどのように変化していくのでしょうか。そして、その“外側”の変化は、女性ホルモンやメンタルといった“内側”の状態とどのようにリンクしているのでしょうか?

「人生はつながっていることを意識してほしい。今の自分の行動が10年後の自分をつくるんです」と呼びかけている産婦人科医・高尾美穂先生。

女性の体型変化を70年にわたり調査研究している「ワコール 人間科学研究開発センター」の研究員・坂本晶子さん。

そんな、「女性の一生」をライフワークとしているおふたりにディスカッションしていただきました。

今回から4回にわたり、「女性の一生の体型変化」について特集します。第1回目のテーマは「加齢にともなう体型変化のポイントと生活習慣の影響」について。女性の一生を通じて、体型は変わっていきますが、大きく変わるポイントがあるそうです。


  • 撮影/藤沢大祐
  • プロフィール
    高尾美穂先生(産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター)
    /女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。ワコールフェムケアポータルサイトのアドバイザー。近著に「更年期に効く美女ヂカラ」リベラル社刊がある。

  • 撮影/合田慎二
  • 坂本晶子さん(ワコール 人間科学研究開発センター 主席研究員)/ワコール入社以来、人間科学研究開発センターにて、乳幼児~成長期、妊娠期を含む成人女性の人体計測に取り組み、女性美やエイジングなどの研究からの情報発信や、研究成果を活用したブラジャーやガードルなど下着の製品開発を担当。2020年には、微小重力研究から「重力に負けないバストケアBra」を開発。

女性の体型が大きく変わる年齢は?

___まずは女性の体型とエイジングについて簡単な概要を教えてください

ワコール人間科学研究開発センター坂本さん(以下、ワコール坂本さん): こちらは2000年に発表した「スパイラルエイジング」の資料です。16歳から46歳までの女性の体型変化を追ったもので、その間に体型が大きく変わるポイントが3回あることがわかりました。16歳から18歳、24歳から26歳、そして37歳から39歳です。


出典:ワコール 人間科学研究開発センター 「スパイラルエイジング(2000年発表)」

10代のスパイラルポイントが、16歳から18歳です。この時期には、成長が止まり、大人のからだつきへの変化が始まります。そして、20代のスパイラルポイントが24歳から26歳で、この時期には体重が減り、からだが引き締まり、女性としてのからだつきが完成します。

さらに30代のスパイラルポイントが37歳から39歳です。この時期になると、体重やウエストサイズが増加し、体型が大きく変わることがわかりました。

___女性ホルモンの働きと体型変化はリンクしているのでしょうか

高尾美穂先生(以下、高尾先生):16歳から18歳の時期は、女性ホルモンの分泌が安定し、生理周期も安定する時期です。16歳から18歳ぐらいというとパンと張りがある高校生をイメージしていただければと思います。女の子から女性へと変わっていく時期ですね。そして24歳から26歳の時期は、エストロゲンのピークで、この頃に女性としてのからだつきが完成します。37歳から39歳以降はエストロゲンが減少し始めます。女性ホルモンの分泌量の変化とスパイラルポイントとは近い時期で起こっていますから、リンクしているという見方は自然だと思います。

ワコール坂本さん:20代のスパイラルポイントにかけて、体重がやや減ったり、サイズが細くなったりと、からだが引き締まっていきます。ダイエットに興味をもったり、体型を保つために自己管理に気を使ったりなどしていることが要因かなと仮定しているのですが。


撮影/石川奈都子

高尾先生:2000年に発表された研究資料なんですね。30代後半のスパイラルポイントとおっしゃっている“曲がり角”も、いまは若干後ろにずれているようなイメージがあります。初経の平均開始年齢は、20数年経てあまり変化はないので、10代に関してはこの通りかなと思います。

___一般的に“35歳から卵巣機能が低下して妊娠の確率が減る”といわれていますが、その頃とスパイラルポイントは一致するといえそうでしょうか

高尾先生:うーん、エストロゲンの減少は35歳ごろから徐々に始まり卵巣機能の低下も始まりますが、更年期のような劇的な変化ではないんです。変化は年々進行するもので、一気に起こるものではないので、体型変化も当事者としては「気がついたら太っていた」とか「体重はあまり変わらないのに脂肪がついた」といった感覚なんだろうなと思います。

加齢によるバストとヒップのかたちの変化は3ステップ

ワコール坂本さん:同一人物の20代から50代までの体型変化を調査したデータから、エイジングにともなうバスト、ヒップの加齢変化の仕方を、3段階のステップでまとめています。


出典:ワコール 人間科学研究開発センター


出典:ワコール 人間科学研究開発センター

高尾先生:たとえばこのステップ2のお尻の変化。ヒップの頂点が下がる、それからメリハリがなくなる、四角くなる、その後に内側に垂れるといった変化ですね。こういう変化は、多分、言語化されていないんですよ。ワコールのみなさんにとっては常識だと思うんですけど、一般の女性は「そんなことは知らなかった」ということだと思うんです。

びっくりして、運動でパーツ痩せやしようとがんばろうとするんだけれども、それはおそらく無理なんですよね。では何が必要なのかという考えに至ってくれるといいのかなと思います。

ワコール坂本さん:まさに周径だけでなくシルエットやかたちが変わるエイジング変化ですが、加齢によって脂肪のつきやすい部位や筋肉の落ちやすい部位などがあるのでしょうか。

高尾先生:日常生活で動かさずにすんでしまう部位は、当然筋肉量が減りやすく、脂肪が増えやすいといえるでしょうね。たとえば二の腕、胴体まわりなどはお肉がついたと感じる女性は少なくないでしょう。


撮影/藤沢大祐

高尾先生:いま、からだのことが気になり興味をもってこの記事を読んでいる方は、すでに年齢が上がってきてステップ2ぐらいになっているような人が多いのかな?と思います。
そう考えると、まず自分がステップ2や3になっている可能性に気づき、自己流の食事制限をするのではなく、たとえば適切な下着でサポートできるということも考えてもらえるといいのかなと思います。こういう他力本願はどんどんしていただきたいですね。また、もし、体型を維持するために具体的な行動に移したいと思ったときは、何が続けられそうなのかを考えてもらうことが重要だと思います。

からだが変化していくことをまずは知る、そして、変化には理由があることを知って受けとめる。今は将来につながる“通過点”と考えて自分のからだと向き合うことが、ここちよく人生を過ごすコツかもしれません。今回の対談がご自身のからだと向き合うきっかけになればうれしいです。

次回は、「太りやすい?!更年期のからだは意識してつくって」です。更年期に生じるからだの変化や、体型を維持する生活習慣についてのおはなしをご紹介します。
取材日:2023年7月25日